もっと分厚い感じで読みたかったグラスホッパー
陽気なギャングを読み終わり、次に手に取ったのがグラスホッパー。
殺し屋たちと妻の復習をしようとする一般人「鈴木」が交錯していく物語。
鈴木を中心として殺し屋たちの物語は繋がっていき、鈴木は自分の周りで何が起こっているのか気づかずに非日常の世界にどんどん進んで行く。
他の作品よりも表現が写真的で、重いカットを繋いでいるような感じなのだけど、
それなのにカット一つ一つの言葉の選び方が淡々としていて、無機質な印象もある。
そして、そこに鈴木が間の抜けた感じで存在するから変な日常感が生まれてる。
物足りなかったのは最後があっさりだったところかな。
もっと分厚い本で読んでみたかった。
終盤の押し屋がする説明場面が唐突で、そこの内容自体は面白いのに、いきなりポンとカットを差し込んだ感じ。
「押し屋」がもっと前に出てきても良かったんじゃないかなと思う。
途中まで読んでいて「押し屋」っていうものにずいぶん期待をしてしまったんだろうな。
「こんなにみんなが探す押し屋がこの先出てくるのか!」って感じで。
でも、あっさりなこと自体は問題ないのかも。
「現実は結局こういうものだよ」っていう意味にも受け取れるし、何より重要なのは鈴木だと思うし。
ただ、槿家族が好きだったからかな。
もっと色々とエピソードが欲しかったと思ってしまった。
そっからラストもいきなりなんだよね。
いきなり全てが終わってしまう。
寺原のことも令嬢のことも殺し屋たちのことも。
いっきに終わってしまう。あっけらかんとしてしまう。
いきなり日常に戻される。
そういうこともあって今回は消化不良な感じでした。
ただ、現実と架空の引用は今回もいろんなところで使われてて良かった。
「ジャック・クリスピン」だったり「ガブリエル・カッソ」だったり。
特にガブリエル・カッソは、
「ガブリエル・カッソの『抑圧』か。面白そう。あとで観てみよ。」
なんて思い、その後ググって「わー、やられたー」ってなったよ。
架空の話なのね。わざわざ「抑圧」が関連検索に出るくらいみんなひっかかってるよ。
あと、 鈴木の妻の描写は少ししか出てこないのに、それでもかわいいってのが良くわかる。
「ねぇ、これ、食べる気しない?」先ほどまでの堂々たる物言いなど忘れたかのように彼女は、鈴木に言った。
こういうのを読んでやっぱりキャラの作り方が上手いなぁと思った。
キーワードを少しずつ散りばめて印象的な台詞を作るだけでキャラってのは出来上がるものなんだなぁと。
あと子供たちがかわいくて読み終わったあと、「バカジャナイノー」は口に出して言いたくなるよ。
「回送電車はまだ、通過している。」で終わっていくのも結構好きですね
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