文字だけで魅せる『悪意』はすごいなと感心
東野圭吾を遡って色々読んでるけど、『悪意』は面白かった。
全てが手記や独白で語られていて、初めは違和感があるんだけど、
そうやって描かれてる理由が真実を隠すためだと途中でわかる。
ただ、それがわかった後に先を考えながら読み進めていくんだけど、
ここでまた違和感が出る。
小説の半分もいかないうちに事件が終わってしまう。
あれ?ってなる。
伏線があって、それを回収して事件の全貌が見えたって思うのにまだ半分も残ってる。
ここから新しい話が始まる。
読者がするであろう勘違いを主役の加賀が説明し、
加賀を小説のイチ読者として見せてるのが上手いなぁと思った。
先読みしようとするんだけど、それが真実なのかどうなのかわからない。
被害者の日高のイメージが二転三転する。
同時に野々口のイメージも二転三転する。
最後の真実は途中で予測がつくかもしれないけど、
一番重要なのは「何でそんな間違った先入観を持ってしまったのか?」ということ。
加賀にそれを説明された時に、「あぁすごいわ。これは。」って思った。
手記の内容の一つ一つに説明が付けられていながら、
全然触れられない内容が最後まで残る。
「全く関係ないなんてことないよな?」
って思いながら読み進めた最後の最後での加賀の説明。
「そのための伏線なのか。」と納得し、感心した。
すごい。
結局、生きている日高は出てこないんだよね。
そこが一番重要ということを思い知る。
日高は外側からの描写しかない。
だから小説独自の面白さが出ているんだなと思った。
講談社 (2001/01)
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