サクサクと伊坂幸太郎作品読み進めてきて、映画化もされた「陽気なギャングが地球を回す」読み終わった。
チルドレンみたいにサラッと読めて良かった。
伊坂作品に良く出てくる、人間の悪の部分だけ取り出したような悪役も今回は出なかったし。
(神崎は嫌な悪人で、多分そのポジションなんだけど、他の作品に比べると残虐な感じがしなかった。あんまり表現が出てこなかったってのも大きいかな)
重くなく、サラッと読めて、爽快な感じになる良い作品だったね。
デカイどんでん返しはなかったけど、群集劇の伏線の回収方法は上手いよね。
伊坂作品は設定の奇妙さを特徴にあげられてて、やっぱりこの作品もそうだったりする。
まず、銀行強盗が主役だし。
ここはまぁよしとして、キャラそれぞれが特殊能力を持ってたりする。
普通に考えると現実味ないんだけど、読んでると不自然な感じがしない。
その能力に関係なく話がシンプルに進んで行くからだと思う。
で、その話の方に魅力がたっぷりだから特殊能力なんてもう全然気にならなくなる。
たとえば、現実の引用だったり、架空の引用だったりを混ぜて多用するから現実感に厚みが増す。
で、それはキャラの形作りにも作用していて、特殊能力以外の特徴に目が行くようになる。
キャラの表現方法が多様なんだろうね。台詞回しとか。
冷静で先の先まで見透かす成瀬、口達者な響野、汚れがない動物みたいな久遠、堂々として強気な雪子。
一言で書けばこんなんだけど、実際はこんな表現じゃ全然物足りない。
それぞれのやり取りや台詞、色んな引用で肉付けされてく。
キャラそれぞれで言うと、
成瀬の「人間は行動をする時に『主人』を拠り所にしているから、銀行強盗が仕事をやり遂げるためには『主人』にならなくちゃいけない」ってのはなるほどなって感心した。
こういう言葉からも頭がいいなってのが伝わってくる。
で、とにかく冷静なんだよね。
響野に対して「早く宇宙人が来ればいいな」って言っちゃうとこだとか笑ってしまった。
純粋な久遠もいい。
普通の人間とは違う考え方、感じ方をする。そこがいい。
「神様は人間の犯罪記事を上から眺めながら自分の責任と感じてるのかも」って言っちゃう所は感心しつつも、かわいらしさを感じる。
久遠はかわいらしい。ワースト3がコロコロ変わるところとか、思わずニヤニヤしてしまう。
「いいか、よく聞いておけよ」って大げさな前置きをする響野には大笑いしてしまう。
響野の演説はきっと誰でも聞いてみたくなると思う。
確かに演説をする強盗なんて居たら少しは気が楽になるのかな。
雪子は話の軸になってるから色んな姿が見える。
冷静だったり、強気だったり、でも弱い所もあったり。
雪子のエピソードが軸になってるから、後半に効いてくる。
4人が出会うエピソードも途中で描かれてるのがまた良い所だろうな。
回りくどくなくすっきり説明されてるのが良いのだよね。
他の事件も読んでみたいなって思わせる。
終盤の「君を驚かせたかった」は洒落てるね。
とても気分がいい。
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